前回、船医として乗船していたことを書いた。
この船は厳格な船で、クルーは全員禁酒。
船長というのは、えらいもので、逮捕権まである。
違反したら、即刻、クビらしい。
こんな遠洋で、小舟で放り出されたら、船酔いで、絶対あの世にいくだろうと思った。
規律を感じ、「ウィスキーボンボンはもっていってもいいのでしょうか。」などとは、乗船前にも、聞くことはできない雰囲気であった。
Galley(ギャレー)と言われる船の厨房にはガラス張りの冷蔵庫があり、ここにいけば、いつでも牛乳は確保できる。
医学部生時代から、ずっと夜酒により睡眠をえるという習慣があるため、悩んだ挙句、この牛乳を寝る前に、酒のようにチビチビグビグビと飲むことにした。
あてはチョコレートにした。
なんとか眠れた。
しかし、
2週間後にチョコレートが枯渇した。
日曜日に30分ほど開かれる簡易売店があったが、列ができ、ノンアルコールビールとチョコレートは即完売。
ラジオ長からは、この船には「もうノンアルコールビールとチョコレートは、なくなりました。」という宣言が、朝のブリーフィングで出航早々にあり、絶望感がただよった。
ベテランの看護師に、「チョコレートがなくなったんだよなあ。」とか空をむいてつぶやいたら、一つ板チョコをくれた。
言ってみるもんだと思った。
しばらく救われたが、またなくなった。
たしかもう一回言ったら、またくれたが、その後は、そう世の中は甘くなかった。
仕方なく、「おかき」の残りがあったので、しばらくそれでつないだ。
船の中では、「司厨長」という食べ物を作る部門の長がいるのだが、重要人物の一人で、「おかきを食べたいなあ。」と看護師にいったら、司厨長に伝わり、なぜか医務室におかきの袋が積んであった。
実にありがたかった。