胃の不調を訴えてこられる患者さんは実におおい。
以下、あくまで私見である。
まず、自分が若いころと違い、胃癌患者の数は、大腸癌患者と逆転し、減少傾向にある。しかし、良性の疾患を含めると、たいへん多い病気といえる。
また、心疾患、脳疾患、その他多岐にわたる病気の表現形として現れることもある。
胃が痛い、胃がもたれる、胃がはる、げっぷがでる、気持ち悪い、などなど、患者さんの訴えは実におおく、消化器外来の約半数はこれではないだろうか。
実際に胃カメラ(内視鏡)を施行してみて、はっきりこれが原因ですよという疾患(器質性疾患)を見ることは、約半数くらいではないのではないだろうか。(約半数は全くの正常所見という意味である。統計的にとったわけではないので、あくまで個人的印象としてである。)
これがはっきりとした原因かなあと言える器質性疾患(肉眼的に形としてとらえられるもの)として、逆流性食道炎(これは程度がさまざまで、臨床的症状との関連は実に難しい。適当な理由づけにされやすい。)、胃炎、胃十二指腸潰瘍、、胃癌などがある。
軽度の所見を、臨床的にまあこの程度は正常だろうととらえるならば、全体の7-8割くらいまで正常といってもいいかもしれない内視鏡所見である。
そうすると、「胃の調子が悪いのはなぜなのか?」という疑問に達する。
機能的(蠕動の不調和、不具合)異常などといわれている、よくわからない範疇に、それらは入れられることになる。
一言でいえば、迷宮入りである。
ところが、である。
内視鏡の所見が「特に問題ありませんよ。」といわれると、多くの患者が再診してくることはない。(もちろん、この医者はだめだと、他の医者にいく、ドクターショッピングのひともいる。)
内視鏡でなにもなかったということで安堵し、なにかしら症状が軽くなった場合、あたかも薬剤のプラセボ(偽薬的な)効果同様、内視鏡プラセボという言葉を作りたくなる。
また、かなり時間がたってから来る患者はいるが、一旦、風邪が治るかのようにしばらくこないことがおおい気がする。
ここでやはり解明されていないのは、脳、精神、自律神経、消化器機能というような部分の密な関連性の世界であり、まだまだ医学が深く入り込めていない世界があることを物語っていると思う。
自分のやり方として、胃の不調を訴える患者に対しては、まず、2週間投薬して再診させ、改善が見られない場合やぶり返す場合は、内視鏡を予約させている。
最後に、重要なこととして、
自分が注意している臨床的な副所見として、食欲低下、体重減少、貧血、頻回のげっぷがなどがある場合は、悪性疾患、胃癌の否定のため、すぐに内視鏡を予約させている。